木+鉄で建てる家 テクノストラクチャー

日本人は木の家に住みたい

安全な住まいの条件は?と聞かれたら、みなさんはどう答えられますか?

「頑丈な家」 「地震や嵐にもびくともしない家」
「いざという時、シェルター代わりになる家」。

なるほど、力負けしない強い家というイメージですね。では、そういう家は何でできているでしょう?

「鉄筋コンクリート」 「鉄骨」 「石造り」

そうですね、固くて丈夫な材料を使うことで、確かに頑丈な家をつくることができます。ところが、ここで一つ問題が。日本人のじつに7割が、鉄やコンクリートではなく、「木の家」に住みたいと考えているというのです。

木の家は強い?弱い?

森林国・日本。古くから日本人は、木とは切っても切れない生活をしてきました。
木の家に住みたいという願いは、理屈を超えて日本人の遺伝子の中に組み込まれてしまっているようにさえ思えます。

木の家は決して弱いわけではありません。その証拠に日本で一番古い建物は、法隆寺という木造建築ですし、これだけの地震国でありながら、数百年を耐え抜いてきた木造建造物は数多くあります。高温多湿な気候風土にも木という材料は適しており、様々な恩恵を住まいにもたらしてくれます。

ただし、木を使って頑丈で後悔しない家を建てるためには、ある弱点を克服しておかなければなりません。

木の家の弱点

木の家の弱点、それは繊維の方向に対して直角にかかる力に弱いということです。
例を挙げて説明しましょう。

1)割り箸を1本、頭の中に思い描いてください。
2)次にそれを折ってみましょう。
3)ふつう横長に持ってポキッと折りますよね?これが繊維の方向に対して直角ということです。
4)今度は割り箸を立てて、上から力を加えてみてください。なかなか折ることができません。
  繊維と同じ方向の力には木はとても強いのです。

上の事例から、家の骨組みの中でどこが一番の弱点になるかわかりましたか?・・・「梁」と答えた方、大正解です。家を支える構造体の中で、重力を受けてたわみやすいのが梁。そこで棟梁たちは昔から、太くて固い材木を梁として使う、真ん中が下がってくるのを想定して最初から弓なりに反った形の材木を使うなど、様々な工夫を凝らしてきました。

木の中に鉄を組み込む?!

築年数が増えると建てつけが悪くなるのも、梁が下がることによって開口部の真ん中あたりが下がってくるから。それを防ぐには、なるべく大きな開口部をつくらないのが良いのですが、それでは柱がいっぱいの、せせこましい家になってしまいます。

そこでパナソニックが考え出したのが、木に鉄を組み合わせた梁『テクノビーム』。木造住宅の良さはそのままに、木造の弱点である梁を鉄によって補強した新技術です。このテクノビームによって、一般的な木造軸組工法で約3.6mしかとれなかった柱と柱の間を、最大約6m(壁心寸法)まで広げることが可能になりました。20畳以上もの大空間が実現でき、ワイドビューを楽しめる大きな窓の設置も自由です。

結露問題も克服

ええっ、でも木と鉄なんて異素材の組み合わせで結露は大丈夫なの?そうおっしゃるあなた、結露の仕組みをよくご存知ですね。

結露とは一般的に、空気中に含まれた水蒸気が冷たい外気によって表面温度が低下した窓や壁に触れ、水滴となって付着する現象をいいます。金属は熱や冷気を通しやすい性質があり、結露が起こりやすいため、テクノビームの開発にあたっては結露対策が非常に重要な課題となりました。

理論的には、冷気を伝える部分を断熱し、余分な湿気を排出する通気を確保できれば結露は起こらないはず。開発メンバーは、寒さの厳しい北海道・帯広にある試験場に試験棟を建設し、検証をスタート。連日連夜、早朝から深夜まで氷点下20℃を超えることもある極寒の地で、冷え込み時のテクノビーム表面や壁内の温度分布を調べ続けました。

そして、壁内に湿気をためないための通気の工夫や、テクノビーム専用断熱材の開発など、一つ一つ問題をクリアしていきました。木と鉄という異素材の組み合わせは、強い上に結露問題も克服した理想の梁となったのです。

後悔しない木の住まい

木のやさしさに鉄の強さを加えたテクノビーム。そのテクノビームを使った木造住宅・テクノストラクチャーの家。私たちはそこに、やさしくて強い、理想の父親像のような建物をイメージします。壁が出来、天井ができれば骨組みの部分は隠れてしまいますが、いつもやさしく家族を支え、いざという時には体を張って家族を守る・・・。

家づくりの中では地味な存在ではありますが、とても大切な≪骨組み≫をどうするかについて、家づくりのスタート時点で、ぜひ考えていただきたいと思います。

安心感を具体的に探ってみよう

どのような住宅会社でも、「自分たちの建てる家なら大丈夫です」と言わないところはないでしょう。でもそこで納得してしまわないで、「その根拠は何ですか?」と尋ねてみてください。どのような答えが返ってくるでしょうか。

「良い木を使っているから」。「腕の良い大工を使っているから」。「○○工法だから」。うーん・・・わかったようなわからないような?

「良い木を使えば何があっても絶対大丈夫なの?」
「大工さんの腕だけが頼りなの?」
「○○工法と言われてもわからないし・・・」

などなど、余計に疑問がわいてくるのではないでしょうか。

結局、安心感が得られないまま、「これだけ熱心に説明してくれているから大丈夫だろう」とか、「現場を見たら木をたくさん使っていたし、きっと頑丈なはず」といった理由で、住宅会社を選んでいる方は結構多いのです。

安心感が見えにくい理由?

これは少々極端な例ですが、建物に太い木をたくさん使っていても基礎がしっかりしていなければ、地震などが起きた場合、家ごと倒れてしまうということが起こり得ます。

また、木と木の接合部が緩んで建物の倒壊につながるケースが多いため、施工品質がとても重要なのですが、ここを大工さんの経験や勘だけに頼るとなると、品質にばらつきが生じてしまいます。

だからと言って、家づくりの経験のないお客様が、自身で基礎を確かめたり、現場の施工を管理したりするのは現実的に不可能。そこで「お宅を信じて任せるから頼むよ」となるわけです。しかし考えてみると、何千万円もの費用を支払って家族の命と財産を守る家を建てるという大事業に対してずいぶん大胆な選択を、お客様は強いられていると言えなくありません。

誰が見てもわかる、具体的な「安心感」を示す

こうした住宅業界のあり方に対し、技術者の集団であるパナソニックは常々、どうも馴染まないものを感じていました。「安心感は目に見えるものでなくてはならないのでは?」。元々が技術者だけに、はっきりとしたデータを示さないと人を納得させられないという考え方が染みついています。「しっかりした職人です」。「きっちり施工しています」。だから「たぶん大丈夫です」では誰も納得しないというのが、パナソニックの思いでした。

そこで踏み込んだのが、建物の強さを数字にして示す『構造計算』という領域でした。

車の衝突実験と同じことを住宅で

構造計算という言葉は、2005年の耐震偽装問題によって広く一般に知られるようになりました。ビルやマンション、木造でも3階建以上の建物等は、構造計算が法律で義務付けられていますが、2階建以下の木造一戸建住宅(延べ床面積500㎡未満)には義務付けられていません。パナソニックが考えたのは、すべての住宅において、この構造計算を行うというものでした。

なぜ構造計算をしようと思ったのか、ヒントは新車の発売前テストにありました。車をわざと衝突させてその壊れ方を見る衝突実験。人の命を乗せるものだから、万一の場合に生命を守れるかどうかのテストは欠かせません。この車の衝突実験と同じ発想から、構造計算が必要と考えたのです。どういうことか、もう少し詳しくお話ししましょう。

災害シミュレーションで安全性を確認

住宅は車のように同じモデルを量産するものではないので、実際壊してみて・・・というわけにはいきません。けれど、万一の災害に対して家の強度が耐えうるかどうかは、立証しておきたい。そこでパナソニックが考えたのが、基礎から屋根まですべての部分の強度を計算し、それをコンピュータにインプット、画面上に実際と同じ強度をもつ家を建ててしまおうというものでした。

そしてそこに地震・台風・豪雪などの負荷をかけて、建物にどのような影響が出るかを実験します。つまり、災害が起きた場合のシミュレーションを何度もコンピュータ上で行い、改良を繰り返しながらバランスの良い構造体をつくりあげていくという、これまでになかった方法が、この構造計算による家づくりでした。

構造計算による家づくり

コンピュータ上で何度も家を建てては壊し、バランスの良い構造を持った家をつくり上げていくという家づくり。
実際の手順をご説明させていただきます。

デザインと安心感の関係は?

ここまで読んで下さった方の中には、「構造計算をすると好きなプランにできないのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。でもご心配なく。むしろその逆でデザインの自由度はアップします。

なぜなら構造計算によって強度が確保できていることがわかれば、どんなに大胆なデザインもOKだからです。反対に、勘と経験に頼る家づくりの方が、「家の形はできるだけ真四角に近く」「窓は大きくしすぎない」「家の角に窓をもってきてはダメ」など、制約が増えやすいかもしれません。

住宅にこそ不可欠な構造計算

一般住宅は、マンションやビルに比べ形も間取りもバラバラで、計算が難しい、あるいは手間がかかるといった理由から、これまで構造計算がなされてきませんでした。しかし、一軒一軒形やデザインが違うからこそ、しっかりと構造計算をし、弱いところを補強しておくべきだというのが、パナソニックの考え方です。

構造計算によって「たぶん大丈夫」という曖昧な言い方ではなく、「ぜったいに大丈夫」に限りなく近づけたいというのが、私たちの思いです。もちろん、大自然の力に対して「絶対」と言い切ることのおこがましさも良く知っているつもりです。それでも、少しでも被害を小さく、安心できるものをという向上心は失ってはならないものだと思います。

安心感を、目に見えるかたちで。それが技術立国・日本の一端を担ってきた私たちのささやかな矜持です。

A⇔文